プリとAXのお話。
「やー、間に合って良かったぜ」
チンピラとオットーを倒した後、私達は海岸から少し離れた小屋の中で休憩をしていた。
私が余りにも被弾するので、彼の魔法力が追いつかずにやっと倒した所で尽きてしまったから。
でも、私にとっては休憩とはならなかった。
まだ心臓がドキドキしている。
チンピラとオットーと戦ったからではなくて。
何故、彼がここに現れたのかと言う事に対して。
「危なかったなー。貞操の危機だぜ、華楠」
へへへっと笑う笑顔に胸が締め付けられた。
違う。あの笑顔じゃない。
朝、南広場で剣士の女の子に見せていた貼り付けたような気持ち悪い笑顔じゃなくて。
昔から私に見せる彼の笑顔だったからだ。
「・・・なんでここにいんのよ」
「うん?海月に聞いた。オットー行くっぽかったよーって」
「そうじゃなくて」
ドキドキが治まらなくて、気を張らないと声が震えてしまいそうだった。
だから声がちょっと低くなった。
「あの子、剣士の子はどうしたのよ。自分から声かけといて放って来たんじゃないでしょうね?」
「心配しなくても、ちゃんと騎士になったよ?」
お礼は貰い損ねたけど、と続けながらまた笑う。
・・・貰い損ねたってどう言う事?
助けに来てくれたんだって思ってもいいの?
「蓮・・・」
「あの子1人で随分頑張ってたみたいでさ。壁してて、結構すぐ上がったんだよね」
「そう」
ちょっと罪悪感が頭をよぎった。
別に直接あの子に何かをした訳じゃないけれど。
壁をして貰う子なんて、ってちょっと見下してた所があったから。
そうか・・・あの子も1人で頑張ってたんだ・・・。
「騎士に転職して無事に素敵な太もも美人になってたぜ」
「馬鹿」
「まぁ、俺は華楠の太ももが一番好きだけど?」
「大馬鹿」
顔を背けてしまった。隣で蓮は「横乳もいいな」などとほざいている。
前にも1度言われた事がある。私の太ももが一番好きだと。
改めて言われると、とても恥ずかしかった。
と言うか、さらっとそういう事を言わないで欲しい。
ただでさえ、アサシンクロスのこの正装は恥ずかしいのに・・・。
組織で絶対的に決められたモノじゃなかったら、自分でもっと露出を抑えるのに。
「何だよ、怒ってんの?せっかくお礼蹴って助けに来てやったのにー」
顔を覗き込まれた。
見て欲しくなくて、両手でその顔を押し戻した。
だって、きっと。多分。今、私の顔は赤いから。
「今日は朝からなんか機嫌悪ぃよな、華楠」
そう呟くと、すっと蓮は立ち上がった。
動いた影に釣られて顔を上げてしまう。
目が合った訳ではなかったけど、見上げた蓮の表情は
困っているのか怒っているのかちょっと分からない表情をしていた。
「なんか、1人で居たいみたいだし。俺帰るわ・・・」
「え・・・?」
ふぅっとため息をついた蓮。
何か呪文を唱えようとする。
やだ、置いていかないで。
「?」
思わず、思わず手が出た。動き出そうとした蓮の袖を掴んでしまった。
蓮がここからいなくなってしまう、置いて行かれてしまう。
そう思ったら考えるより先に身体が動いてしまった。
「・・・で」
「え?」
精一杯の声で言ったつもりなのに、蓮には届かなかったみたい。
もう一度言うの?今の・・・。
「なんだよ?聞こえなかった」
「・・・馬鹿」
「は?」
「馬鹿っ!行かないでって言ったのよ!」
袖を掴んだ手に力が入った。
その手に蓮が手を重ね、ゆっくり解き解く。
そして、ゆるく手を握って目の前に腰を下ろしたのだ。
困っても怒ってもいない、優しく嬉しそうな表情で。
「俺が来て、嬉しかった?」
「・・・」
「全くよー、華楠は昔っから素直じゃねぇよなぁ」
「何よ」
「嬉しかったんだろ?うん、て言え」
「・・・、・・・」
どうしても、どうしても言えなくて。
私はただ、頷いた。
握られた手にきゅっと力が篭る。
さっきよりも嬉しそうな顔をして、蓮は空いてた手で私の頭を撫でた。
ドキドキが強すぎて身体が震えそう。鼻の奥がつんとして、少しだけ視界が滲んだ。
嬉しかった。あんな絶妙なダイミングで来てくれるなんて、思ってもみなかったから。
「やっぱり素直じゃねぇな、まぁ頷いたので許してやるか」
「偉そうに・・・」
「偉いじゃん、俺。彼女のピンチに駆けつけたんだぜ?」
手を離して立ち上がると、蓮は両手を腰に当てて私を見下ろした。
含み笑いなんかして、ちょっとわくわくしてる感じがする。
ていうか、彼女って言った。言い切った。私、蓮の彼女なんだ・・・。
いや、そりゃまぁ一応付き合ってる事になってたけど。
最近一緒に居る事無かったし、狩りも一人だったし・・・。
朝、即座に否定したのに・・・改めて言われると恥ずかしいや。
でも、彼女なら・・・。よし・・・。
思い切って立ち上がった。ひとつ、大きく呼吸する。
「蓮」
「ん?」
余所見をしてた所を呼んで、こっちを向かせた。
そして、間も空けないでキスしてみた。
頬じゃなく。
口唇に。
「・・・華、楠?」
「先払いでもいいんでしょ?キスしてやったんだから壁、しなさいよね」
言いながら、恥ずかしくて先に小屋を出た。
間を空けないでやってよかった・・・。間があったら絶対出来なかった。
思い切ってよかった・・・。
お願い、伝わって。これが私の精一杯だから。
「よっしゃ!発光まで壁してやるぜ!!!!」
発光?!
意気揚々と小屋から出てきて体操なんか始める蓮。
物凄く気合が入ってる・・・と言うか私が入れてしまったのだろうか。
「私の発光よりあんた先に転生しなさいよ!」
「いや、転生は華楠を発光させた後だ!」
「なんでそうなんのよ?私があんたと同じレベルになったら公平組めるじゃない!」
「いーの!今それくらいの報酬を先払いされたんだからするったらする!」
言葉に詰まった。
伝わった?少しでも伝わったの?
もう・・・私以外の女の子、壁とかしない?
少しの間の後。
蓮からパーティの加入要請が来た。
目指せ発光!!!!!
そのまんま過ぎて笑ってしまった。
でも嬉しかった。蓮らしい。
「いいか、嫌だつっても付いてくからな?絶対パーティ抜けんじゃねぇぞ?」
「はいはい、わかったわよ。ほら、早く壁してよー」
「おっしゃあああああああああああああ!」
大声を張り上げながら、蓮は砂浜へ走って行った。
そして、2匹も3匹もオットーを連れて来るのだ。
余り沢山に囲まれないように。私も必死で1匹ずつ確実に倒していく。
まだ公平を組んで狩りは出来そうにないけれど。
これからは二人で一緒に同じ狩場を回れそう。
目指せ発光。うん、悪くない。
終。
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うあああああああああああああああああああああああああああああああああ。
かゆいーーーーーーかゆいよーーーーーー!!!!!!1
自分で書いててすげぇかゆい!!!!!!!!!!111
そうかっレンアイモノってこんなだったー。うひぃぃぃぃぃ。
どうでしたでしょうか。いやぁ、ツンデレってなかなか難しいス。
ちゃんとなってるか微妙ですが・・・。
少しでもニヤニヤしていただけたら幸いです。
初UP駄文があやうくGLになるとこでしたwww
20091023/まつもとゆきる。
モドル。