廃プリとAXの昔話。
気付けば街の中は真っ暗闇だった。
この街の中に蝋燭なんて上等な物が買える者が居る訳は無いようで、海月が居た酒場も持ち家の中も真っ暗。
街の入り口の奥、リヒタルゼンの街がぼんやりと淡く光っているのが見えた。
アサシンは夜目が利く。完璧に見えると言う訳ではないが、一般人よりはいくらかはっきり見えるだろう。
『動いたわ、海月。二人が外へ出て行く』
上から見張っていた華楠からの耳打ち。
勿論海月も二人を目で追っていた。
『うん、追尾中』
『何処へ行くのかしら』
やっと酒場から出られて、海月は一度だけ深く呼吸する。
でも、細心の注意を払い前を歩いていく二人に悟られないように。
二人は街の一段高くなった方へと歩いていく。
確かそちら側には機能していない宿屋らしき物があったような。
『あそこをねぐらにしているのかしら』
『そうかもしれないね』
宿屋らしき物。
この表現は間違っていない。
昼間に入り込んでみたが、カウンターのような物が申し訳程度に入り口にあり、
中には部屋が二つのみ。それも簡易なベッドが一つずつしか置いていないのだ。
他には何も無い。トイレも食堂も風呂すらも。
そして、二人の勘は的中した。
男二人はその宿屋らしき物の中へと入っていったのだ。
『ビンゴ』
華楠が呟く。
バサっとマントを脱ぎ捨てて、何処に居たのか上から飛び降りて来た。
どうやら酒場の屋上からずっと建物の屋根伝いにここまでやって来たらしかった。
「脱いじゃっていいの?」
「皮臭いのよ。それにもうあの二人で決まりでしょ?」
「顔確認した?」
「まだだけど・・・」
えへっと笑って見せる華楠。
その姿に、海月は軽く溜息を付いた。
しかし、ここまで来てしまってはもう引き返せないのも事実だった。
海月もマントを脱ぐ。
ちゃんと顔を確認してからやらなければ。
この任務の一番気を付けなければならない事は、人違いだ。
そんな事考えれば分る事なのだが、こっちの任務に慣れない間には良く起こってしまう事故らしい。
頭の中で「人を殺す」と言う事ばかりを先に考えてしまって、冷静さを失い「あいつだ」と思い込んでやってしまう。
そんなケースが何件もあったとアリエルに口をすっぱくして言われた。
華楠がちょっとそんな風になりかけているので、海月は少し深く呼吸をして自分自身を落ち着かせた。
そして、華楠にも落ち着くように言う。
これは二人の任務だ。二人で成功させなければ意味が無い。
「華楠、まずは顔の確認をしよう。殺すのはそれからだよ」
「うん、わかったわ」
視線を合わせた二人は頷き合った。
そしてすぅっと暗闇の中に溶け消える。
アサシンのクローキングと言うスキルだ。
自分の気配と姿を消して歩く事が出来る。
その姿で二人はあの男二人の居る部屋の中へと侵入した。
片方の部屋へ入った海月は目を見開いた。
昼間入った時にはベッドしか無かった部屋に、何か分らない機械が置いてある。
宝箱型の機械にスイッチが沢山ついた物。手に収まるくらいの箱型の機械をベッドへ上げてその前に男は膝を付いていた。
手配書の写真はもう覚えるくらいに見た。
後は、この顔を覗き込めば・・・。
『海月、違うわ。こいつじゃない』
『うん、こっちも違う。なんか変な機械広げてるからそうかと思ったんだけどな』
そこまで言って、海月ははっと気付いた。
そういえば華楠の方の手配書の写真は一度見た切りで覚えて居なかった。
もしかすると・・・。
『ねぇ、華楠』
『これってさ』
どうやら華楠も同じ事を思ったらしかった。
後は言わなくても伝わった。
お互いの気配が近づいてくる。
擦れ違う瞬間に拳をぶつけ合った。
そこからは呼吸をしていたか定かではない。
部屋に忍び込む。こちらもあちらと同じく何やら分らない機械を部屋いっぱいに広げていた。
ベッドに上げた小さな機械を前に膝を付いていて、イヤホンマイクを頭に付けて何かをボソボソと喋っている。
確信はあった。だが、まずは顔を確認した。
うん、間違いない。こいつだ。
誰かと会話をしているようだったので、クローキング状態のままでイヤホンマイクを繋ぐコードを切り裂く。
「・・・?あれ?おーい、おーい?なんだ?電波がわっ」
「残念、お終いだ」
アリエルに言われた通りに背後に忍び寄って姿を現して、口を塞ぎ。
首元にグラディウスをピタリとつけた。
耳元で囁いた言葉は勝手に出て来た。
まぁ、最期に聞く言葉だ。別にいいか。と海月は変に冷めた気持ちで思い。
なんの躊躇いもなく、力一杯グラディウスで男の首を切り裂いた。
鮮血が勢い良く噴き出してびしゃっと壁に模様を描く。
力を込め過ぎたのか、男の首はぷらんと後ろへ向き見開かれたままの目が海月を見ていた。
肉が裂け、骨が砕け折れ。首の後ろ側の皮一枚で繋がっているようだった。
それを別になんとも思わず髪の毛を掴んで前へと戻すと男は床に正座をしたような格好で絶命した。
グラディウスに付いた鮮血を振り払い鞘へ収め、麻袋を取り出して頭から被せる。
初めてとは思えない冷静さだった。
「海月ぃ」
隣の部屋から華楠が顔を出した。
振り向いて見れば何やら困った顔をしている。
「どうしたの?」
「取れないのよー」
「取れない?」
華楠の居る部屋まで歩いて言って、海月が目にした物。
鮮血で真っ赤に染まった部屋。壊れている機械類。
その真ん中、機械類に囲まれて絶命している男。
その首に刺さっているグラディウス。
華楠はそのグラディウスが取れないと訴えていた。
「これが取れないの?」
「そうなの。なんか引っかかったみたいで」
死体には気持ち悪くて触れないと言う。
自分で殺したくせに、と海月は思ったが口には出さなかった。
死体の頭に手をかけてグラディウスの柄を引っ張ってみる。
確かに何かが引っかかる感触がした。どうやら骨に突き刺さってしまっているらしい。
華楠に柄を持たせて引っ張って貰い、海月が頭部を引っ張ると言う事にした。
「行くよー、せーのっ」
がりっと嫌な音がしてグラディウスは抜けた。
華楠の身体が勢い余って壁に激突する。海月も死体の頭部を持ったまま後ろによろよろと倒れそうになった。
海月の背後は鮮血のアートで赤く染まった壁だったので、倒れるのはなんとか踏ん張った。
「うわぁ、刃こぼれした」
華楠が指先でグラディウスの刃をなぞりながら口唇を尖らす。
首の骨に突き刺さるとは華楠も余程力一杯やったのだろう。
良く見れば、華楠の方の死体は目を閉じていた。
どうやら、あの番人風の男を眠らせた時のあの薬を嗅がせてから殺したらしい。
眠ったまま死んでいけたなら苦しまずに済んで良かったのかな、と思う海月だった。
「海月、もう袋に入れた?」
「いや、被せただけ。転がして縛っちゃおうかなって思って」
「あぁ、それ楽そう。どうやって入れようか悩んでたのよね」
言うや否や麻袋を取り出すと、先程の海月のように頭からすっぽりと被せた。
そして血の海とは反対側に蹴り飛ばして脚の方を上に袋を縛る。
海月もそれを見て部屋に戻ると、同じように蹴り飛ばして袋を縛り、担いで華楠の所へ戻った。
死体と言う物は命が詰まっていただけあってとても重い。
暗闇の中、ボソボソと二人は喋り出した。
「それにしてもさ、血ってあんなに勢い良く噴き出すもんなのね」
「ね、ちょっと驚いた」
驚いた、と言う割りに全く感情が篭っていなかった。本当に驚いたのかどうか。
なんだか海月は酷く心が静かで落ち着いていて、とても人を一人殺した後には見えなかった。
華楠の方は恐怖は感じて居ないにしても、些か興奮しているようで少し落ち着きが無い。
「で、これってもう出切っちゃったのかしらね」
「そうなんじゃない?傷口乾いてたみたいだし」
現に海月の傍らにある麻袋の下の方、死体の頭の方は血に染まったりはしていなかった。
だが、放って置くと何か別のモノが出て来てしまうかもしれない。
何だか嫌な予感がしたので、海月は立ち上がって麻袋を担いだ。
「華楠、帰ろう。目的は果たしたんだし、報告しなきゃ」
「あ、そうだった。何和んでたのかしら」
華楠も立ち上がり麻袋を担ごうとしたが、重くて担げなかったので海月に半分持って貰って外に出た。
外に出られれば蝶の羽が使える。
海月は麻袋を片手で担いだまま、蝶の羽を噛み千切り。
華楠は麻袋を地面に置いて紐だけを持ち、両手で蝶の羽を千切った。
アサシンギルドに戻ったのは夜中だった。
麻袋を担いで戻って来た二人を見て、アリエルはしばらくぽかんと口を開けていた。
呆れたからではない。心底驚いて居たのである。
この二人は元々成績は良かった。それはアリエルの私事抜きでそう思って居た。
だが今日は、初めての『こちら側』の任務だったのだ。
今まで初めての奴らは、最低でも3日かけてこなして来る奴らばかりだった。
それがどうだ。
目の前には任務を終えてきた証の麻袋。
触ってみると冷たいが確かに人の形をした物が入っている。
しかも目の前に立つ二人は返り血一滴浴びておらず、処理後の恐怖におののいてもいなかった。
実に堂々としていた。顔つきはもう立派なアサシンそのものだった。
「お前達・・・これ、本当に・・・」
間違いじゃないんだな?とアリエルの顔が言っている。
それに頷いて見せると海月は懐から手配書を取り出してアリエルに渡し、
自分の持って来た麻袋を紐解いて中身を床へと蹴り出した。ゴロンと転がり出る死体。
アリエルは出て来た死体の頭を掴んで顔を確認する。
・・・間違いじゃない。本人だ。
と、言う事は華楠も。
アリエルが華楠の方を向くと華楠も海月と同様にアリエルに手配書を渡し、
自分の麻袋を紐解いて中身を蹴り出した。床に二体の死体が転がる。
当然こちらも間違いではなかった。
何て事だ。たった一晩でターゲットを抹殺して来たと言うのか。
アリエルは二つの死体の首の傷を見る。
ぱっくりと裂けた傷。そこには躊躇いの痕などは見受けられなかった。
しかも片方、海月の袋から出て来た方は皮一枚でやっと繋がっている程度。
任務に行く前の二人の姿が脳裏をよぎる。
特にあの、海月の全てを受け入れたような。あの姿が蘇った。
「凄いじゃないか。記録更新だよ」
聞き覚えのある声がして視線を向けた。
カウンターの向こうでキエルが深く頭を下げていた。
目の前のアリエルも頭を下げたので、海月も華楠も慌てて頭を下げた。
現れたのはオーラを纏ったアサシンクロスだった。
光を受けて輝いている月のような長い銀髪。それをゆるく結って肩口に垂らしている。
ミニグラスをかけた細い目がにこにこと笑っていた。
「頭を上げていいよ。そんなに長時間頭を下げていたら頭に血が上ってしまう」
「マスター、降りていらっしゃるなんて御珍しいですね」
キエルがカウンターから出て来た。
海月と華楠にとってはこっちの方が珍しかったが・・・。
この人がアサシンギルドのマスターなのか、と海月と華楠は思った。
どうやってなるのか、まだわからないアサシンクロスでオーラ状態だ。
とても凄い人なのだろう。
この声にいつも呼び出されていたんだ、などと関心していると。
細い目がすっと海月と華楠の方を向いた。
「君達の事はいつもアリエルから聞いていましたよ?今日が暗殺の初任務だったそうですね」
「はい」
「はい」
優しい声色だったが威圧感がありなんとなく怖かった。
偉い人と言うのはこう言うモノだろうか。
「年はいくつですか?」
「えっと、18になりました」
「19です」
海月、華楠の順でそれぞれ答える。
マスターはそうですか、と呟いて頷いた。
次は一体何を聞かれるのだろうかと、不安に思っていると。
「今日はお疲れ様でした。疲れたでしょう?暗殺とはね、疲れてしまうものなんです。
日常に戻って神経を休ませて上げて下さい」
そう言うと手にしていた薄緑色の小瓶を丁寧にそれぞれに渡してくれた。
例の薬だった。
別に疲れてなんかいない、と海月は思った。
確かに夜になるまでじっと酒場で酒の臭気に耐えるのは大変だったけれど、
目標を仕留めるのは簡単だった。あっと言う間だった。何とも思わなかった。
もっと大変な相手が居るのかなぁ、なんて思ったりしていた。
「さぁ、美味しくはないと思いますが飲んで下さい。そしてしっかりと休んで下さいね」
余程大事な事なのか、マスターはまた休めと繰り返した。
まぁ、夜だから眠いと言うのもあるので言われる通り戻ったら寝る事にする。
コルクの蓋を開け、鼻を摘んでいつものように飲み下す。
隣でも華楠が同じようにして飲み下して居た。
やはり、眉を寄せ唸ってしまう味だ。作っているのは誰だろう。
アリエルから今日の報酬を受け取った。いつもよりもずっしりと重い皮袋。
こちら側の仕事はやはり内容が内容だけに、報酬額も格段に上なのだ。
帰り、出口付近までマスターは二人の後を付いて来た。
気に入られてしまったのだろうか。それはそれで他のアサシン達に申し訳無い気がする。
「では、また。君達にお願い出来る任務があったらお呼び立てしますよ」
「はい、さようなら」
「さようなら」
海月と華楠はマスターに頭を下げてアサシンギルドから出て行った。
二人の後ろ姿を見届けてから。
マスターはミニグラスを中指でぐっと上げた。
つかつかと部屋の中へ戻る。
中では海月と華楠の持って来た死体を麻袋に詰め直しているアサシンクロスとアリエルとキエルの姿。
マスターが戻って来たのを確認すると、アサシンクロスは麻袋を両脇に抱えてその場を去り、
メインルームには3人が残った。
「海月、と言ったか。18歳の」
「はい、そうです」
マスターの呟きにアリエルが答えた。
マスターはいつもキエルの居るカウンターに腰掛けると腕を組んで眉間に皺を寄せた。
「あの子がやったんだろう?あの首皮一枚の死体」
見ていないようでしっかりと見ている。アサシンの頂点に立つ男だ。抜かりは無い。
「あの子は危ないなぁ。初回であれだけやっておいてケロっとしていた。あれは危ないよ」
確かに、とアリエルもキエルも思ったのでひとつ頷いた。
「それに、任務内容を告げた時の反応もね。気になったんだ。普通は・・・華楠と言ったか。あの子の様に恐怖におののくよ、普通は」
「そうですよね。私も海月はそういった反応をする子だとばかり思っていました」
アリエルの言葉に、そう。とマスターは答える。
「海月、戻ってからの反動が気になるな。崩壊しないといいが」
崩壊、と言う言葉にアリエルもキエルもぞっと背筋が凍りつくのを感じた。
あの年齢で崩壊なんて余りに酷すぎる。
崩壊とは言葉の通りだ。
精神崩壊。そのままだ。
自分では許容出来なくなった感情が切欠となって精神が崩壊する。
そうなってしまった人間はもう二度と元には戻る事が出来ず、廃人になってしまうのだ。
言葉を喋る事が出来なくなる。笑う事も泣く事も怒る事も喜ぶ事も出来なくなる。
ただただ目を開いてぼーっとして動く事もなくその場に居るだけになってしまう。
想像してか思わずアリエルは涙を零した。
「こらこら、誰も崩壊するとは言ってない。泣くなんて君らしくないな」
「・・・すみません」
「まぁ、君の事や君達の関係性も知っている。理解は出来るよ」
アリエルの頭をぽんぽんと軽く叩いてマスターは笑って見せる。
「どうしてやったらいいのでしょうか」
ぽつり、とキエルが呟いた。
キエルもキエルなりに海月の事を気にかけていたのだ。
「そうだなぁ。日常での出来事だからな、僕らは直接何も出来ないってのが本音だな」
すぱっと言い切るマスターの言葉に、やはりそうか、とキエルは心中で呟いた。
マスターを筆頭に、キエルや他の役職に就いているアサシンクロス達は
基本的にアサシンギルド内で生活をしている。
彼らが「日常」と呼んでいる場所に彼らの居場所は無く、滅多な事が起きない限り外に出る事はまず無いのだ。
アリエルだけは特別でたまに所属しているアサシン達では手に負えない任務を請け負ったりするので、外に出る事もある。
但し、アリエルが任務に就く時は一人だ。
かつて彼女のパートナーだったアサシンは今、モロクで独り小さな家で生きている。
そう、生きている。廃人となって・・・。先程アリエルが「崩壊」に反応したのはこれが原因でもあった。
その人物に会う為に任務以外でもたまにアリエルはアサシンギルドの外へと出て行くのだ。
「私も、関与はしない方がいいですよね」
「そうだな。君は背負ってるモノが大き過ぎるだろう。それ以上背負ってはまずい」
うーん、と首を捻るマスター。
少し考えた後、膝をぽんと叩き立ち上がった。
「海月の過去の事と現在の周辺調査をしよう」
「本気ですか、マスター?」
アリエルは怪訝そうな顔をする。
アリエルだって海月自身の事はよく知っている。
だが周辺の事はよく知らなかった。幼馴染の狩りの相方が居ると言う事くらいしか知らない。
どのくらいの規模のギルドに入っているのか、とか。
普段は何処で暮らして居るのか、とか。
家族は何人居るのか、とか。
聞きたい事は沢山あったが全て日常の事。アリエルには関係無い事だと思って居た。
それをマスターは調べ上げると言うのだ。
それも、まだ18年しか生きていない少年の過去の事まで。
自分の足元、その辺りに落ちている石ころ程度の存在だった海月が、マスターの中でいつの間に大きな存在になっていたのか。
「調査員2,3人で足りるよな。多い?」
「多いんじゃないですか?」
さらりと質問に答えるのはキエルだった。
マスターはそれを聞いて「多いかー。じゃあ2人でいいか」と呟いている。
「おい、キエル。お前それでいいと思ってるのか?」
「逆に問うが。お前はこのまま何もしないでいいのか?」
言われて言葉に詰まるアリエル。
「マスターは海月が日常に戻った後の強そうな反動の為に考えて下さったんだぞ?」
「それは・・・そうだが・・・」
「ここは素直に従っておくべきじゃないのか」
アリエルは俯いた。
複雑な気分だった。
出来れば直接、海月の口から聞きたい事ばかりだったからだ。
だが自分の手で海月を守ってやる事が出来ない今、出来る事を考えるにはこれしか方法が無いのも確かなのだ。
「そうだな・・・そうだ」
言い聞かせるようにうん、うんと頷いた。
「じゃあ、頼むぞ。明朝までに戻る事」
アリエルとキエルが話をしている間に、既にマスターは行動に移しており
調査員のアサシンクロスが指示を受けすぅっと空間に溶けて消えた。
それを見てアリエルとキエルは唖然とした。余りにも仕事が速すぎる。
二人顔を見合わせて、今の自分達の押し問答は一体何の為だったのかと溜息をつくのだった。
#7→