廃プリとAXのお話。
何度イったのか、途中で数えるのはやめにした。
それくらい海月は貪欲に俺を求めて止まらなかった。
朝日が昇り始め、うっすらと窓の外が白くなり始めた頃に気を失うように果て、
その日の行為は終わりを告げたのだった。
本当は風呂に入れてやりたかったけれど、自ら動かなくなった身体を抱えて風呂に入るのは相当体力を使う。
可愛いし、自慢の恋人だからとは言え海月も一人前の男である。
その気になればソロで狩場を駆け巡れる程の体力、筋力を兼ね備えている。
俺だってプリーストとは言え、殴り型1本でここまでやってきた。体力、筋力には自信はあるつもりだ。
だが、今は腰が・・・。そう、腰があまり言う事を聞いてくれない。
「頑張りすぎやわ、俺もお前も」
静かに寝息を立てる頬にそっと指で触れた。
ぐっすり眠っているのか、身じろぎ一つしない。
それを見届けて、バスルームに向かうと軽く自分の身体を流した。
海月の零した白濁液や汗でぐっしょりどろどろだ。
余り長居をしていると眩暈を起こしかねなかったので、早々に切り上げ、
今度はタオルを湯に浸し絞る。海月の身体を拭いてやる為に。
腹の辺りや脚の付け根、入り口付近を丁寧に拭いてやる。
ここまでは身じろぎ一つせず眠っていた海月だったが。
問題は・・・。
「・・・どうしたもんかな」
思えば何度イったのかわからないのだから、何度この中へ射精してしまったのかも分らない訳で。
この小さい入り口の奥にどれだけ俺の吐き出したモノが詰まっているのやら・・・。
いつも海月はどうしていたんだろうなぁ。
ただ考えていても仕方が無いし、放って置いたら乾いて大変な事になるのは容易に想像が付くので。
つぷっと指先を潜り込ませてみる。
先程まで俺のモノが入りっぱなしだったソコは易々と指を受け入れた。
全部とは行かないまでも、掻き出すしかないよな。
何か悪戯をしているような気持ちで、時々海月の顔を見上げながらゆっくりと指を動かした。
そしたらまぁ、出てくるは出てくるは・・・。
こんだけ俺もまぁ、良く出したなとか馬鹿な事を思いつつ。
お尻の下に敷いたタオルがグジュグジュになってしまったのを見て、顔をしかめる。
「こんだけ受け止めても孕まんねやからなぁ・・・孕んだらええのに」
なんて、ぽつり。夢に近い本音が口を付いて出た。
まぁ、無理なのは重々承知である。
中を掻き混ぜるように指を動かし、勝手にもう大丈夫かなんて区切りを付けて指を引き抜いた。
「んっ」
海月が声を上げる。
起こしてしまったか。
・・・起きない方がおかしいか・・・自分の中を異物が蹂躙してるのに。
濡れた方のタオルで入り口を拭いて、完了。
小走りにバスルームに向かい、タオルを軽く湯に浸けてそのままに戻ってきた。
後で洗えばいいや。
「気が付いたか、海月」
「・・・瑠玖」
見上げて来た目は「何してたの?」と問うているように感じた。
「お掃除してました。海月の中も綺麗にしとったから、ちょっとくすぐったかったかもしれんな」
「・・・中?」
「うん」
言ってやると海月は耳まで真っ赤にして顔半分を布団にうずめ、
「そっか、えっちしたんだ」なんて思い出したように呟いた。
その様子が何処かひっかかって首を捻る。
もしや、これはもしや。
「なぁ?海月」
「うん?」
「もしかして、覚えてないん?」
「・・・」
あぁ、やっぱり。
「俺の上で腰振ったのも?俺の咥えて飲んで美味しいて言うたのも?」
海月の顔が一瞬青ざめたかと思うとまたぼっと赤くなる。
「もっともっとて可愛くせがんで来たのも?覚えてないんか・・・?」
こくん、と頷くのが見えた。
じゃあ一体なんだったって言うんだ、昨日の海月は。
夢か?幻か?俺の作り出した幻想だとでも言うのか?
あーカミサマー!答えをーお導きをー!
がくりと頭が落ちるのが分った。
「・・・俺、そんな事したの?」
身を起こし、海月が顔を覗き込んで来る。
今の俺はどんな顔をしてるだろう。
泣きそうな顔でもしてるだろうか。がっかりした顔でもしてるだろうか。
もしかしたらその両方かもしれないけれど、海月にそんな顔見せたくないな。
ぎゅっと顔が何かに挟まれた。
海月の両手だった。なんだか熱い。昨日とは違う、熱を帯びている。
そのまま力まかせに上へと持ち上げられた。
「瑠玖がそう言うなら信じるよ。俺、瑠玖にそうしたって・・・別に、変じゃないと思うし」
ね?にこっと笑って見せる。
その姿が愛らしくて愛らしくて。
抱き締めようとした瞬間。
一拍早く、海月の身体は俺の腕を擦り抜けてベッドへと落ちた。
「海月?!」
なんだろう、呼吸が荒い。
ちゃんと見なかったから分らなかったが、頬も上気していて赤い。
これは照れていて赤いんじゃなかった。
どうしてもっと早く気が付いてやらなかったんだ。
「ごめん、瑠玖。寒いから・・・なんか服取って」
発せられた言葉はしっかりしていたけれど、声は若干震えていた。
慌ててコットンシャツに厚手の上着、新しいアンダーウェアに厚手のズボンを取って来た。
自分で着ると言う海月を手伝う。
着替え終わって一息付くと、しっかり布団をかけてやり、やっと額に手をあてた。
熱い。やはり、発熱している。
「いっぱいえっちしたから、熱出ちゃったのかな」
「いや、それは・・・」
どうかな・・・。
あるかもしれないな、昨日のあの様子からいくと。
明らかにおかしかったしなぁ。
そういえば・・・何か薬品の匂いがしたんだっけ。
舌先にピリっと痺れるような感触を思い出した。
とりあえず、先に海月を冷やそう。
冷凍庫から氷片を取り出し砕き割る。それを手近な袋に適当に突っ込み、
新しいタオルを持ってベッドサイドへ。
海月の額にタオルを置いてその上から氷の袋を置いた。
「・・・気持ちいい」
氷の冷たさにか、海月は目を細める。
気持ちいい、の言葉が昨日の行為の最中の言葉と重なり頭の中で響いてしまい
俺は慌てて頭を振ってそれを掻き消した。
いかん。余韻に浸っている場合ではない。
「なぁ、海月」
「うん」
「昨日な、狩りでハイスピードポーション以外に何か薬っぽいの飲んだ?」
「あー・・・うん」
何処か言い難そうに海月は答える。
「何で分ったの?」
「そりゃお前、キスした時にわかったわ」
「そっか、バレないから大丈夫って言ってたのに」
誰がだ?
・・・いや、大方予想はついた。
「で、何飲まされたん」
「・・・毒瓶」
「毒瓶?!」
毒瓶と言えば、飲んだ者を即死に至らしめる劇薬だ。
製造出来るのは一部のアサシンクロスのみで、薬に関して精通しているアルケミストでさえもその製造材料を知らないと言う。
普通の人間が飲めば劇薬なそれも、アサシンクロスが服用すると約1分間だが通常の4倍の攻撃力を発揮する事が出来、
よく攻城戦に参加するアサシンクロス達が常用していると聞いた事がある。
その為、露店街では結構な高値で売られて居たような気がしたのだが。
「なんでそんなモン飲んで狩りなんて」
「蓮がボス狩り行こうって、天津のMVP狩って来たんだ」
なんだって!?
紫の箱あげただろ?と海月はサイドボードに置かれた箱を指さす。
眩暈がした。
いくら転生2次職だからとは言え、まだ俺達はレベル70台だ。
ボス狩りなんてまだまだ先の話なのだ。
それを・・・あいつ。
「結局、何個飲んだかなぁ?1個、2個じゃ倒せなくて何個か飲んだ気がする」
「華楠と二人でやろ?」
「うん、そう」
・・・あの、やろう。
どうやってそんな数の毒瓶を手に入れたのか知らないが、
俺の可愛い恋人はまんまとあいつに利用されてしまった訳だ。
ただ、ボス狩りに行きたいのなら俺も一緒に居た方が支援的にも有利な筈なのに。
俺を誘わない訳だ。実験的な事をしたかった訳だから。
ふつふつと怒りが込み上げる。
お仕置きじゃー!
「海月」
「・・・うん」
俺の声は相当低く怒りが滲み出ていたらしい。
返事をする海月の声は軽く怯えていた。
「俺、ちょっと出掛けてくるから大人しく寝とるんやで」
「わ、わかった」
小刻みに首を縦に振るのが見える。
きちっと法衣に着替えると、ぎゅっとグローブをはめ。頭にたぬきさんをしっかりと乗せる。
壁に立てかけてある中から、トリプルブラッディチェインを掴み取った。
「・・・瑠玖」
「行って来る」
首だけで海月を振り返り、頷くのを見届けると家を出た。
そして・・・。
『蓮ゴルァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!』
家を出たと同時に奴に耳打ちを最大声量でぶっ放したのだった。
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